成績不振の生徒さんを指導する際、私には流儀があります。裏技的指導法と呼ぶには大袈裟ですが、ご紹介したいと思います。

 

成績不振といっても、その幅は様々です。家庭教師としての経験でいえば、まったく授業についていけていない子供もいましたし、そもそも学校に行っていない子もいました。

 

受験というゴールは決まっている訳ですので、まずはそこから逆算した学習計画を共有することから始めます。しかし、成績不振が長く続いている子供は、成功体験が乏しいので「こうしたらうまくいく」と話してもなかなか共感してくれませんし、長期的な展望を語っても「どうせ自分はできない」と消極的です。

 

本来、学習というのは基礎をしっかりと固めてから応用力をつけていくものです。地に根を張り、茎や葉を伸ばし、たくさんの栄養分を吸収しながら大きくなっていく「木」に例えるとイメージしやすいでしょうか。

 

しかし成績不振に悩んでいる子供にこの話をしても、やる気を引き出すどころか、目の前の課題の多さに押しつぶされそうな気持ちにさせてしまうのです。

 

そこで、私は彼らに対しては荒療治で取り組みます。例えると衣類を「タンス」の引き出しに一段一段きちんと整理収納ながら、積み重ねるイメージです。一分野の学習内容が頭の中で理解、整理できた時に引き出し一段が完成します。その引き出しを一段ずつ着実に重ねていこうと話すのです。

 

段を高く積みあげることを急ぐよりも、一段一段をきちんと頭の中で整理しながら重ねていけばよいのです。ただ上に重ねていくだけですから、過去の積み重ねがなくても弊害はありません。

 

教師の手腕に大きくかかっていますが、その一段も100%を最初から詰め込むのではなく、70%のイメージで試験に頻出している内容から優先して詰めさせます。また、彼らが身につけた知識を簡単に引き出せるように整理の仕方も工夫します。簡単に仕上がる段もありますが、基礎知識を要する場合はその場で遡って丁寧に仕上げます。

 

こうやって、自分の学習状況を把握しながら着実に知識をつけさせていくことは、子供のやる気を損ねませんしとても効果的です。

 

また、成績不振が長く続いている子の傾向として、飽きっぽく、理解することを面倒臭がることが見受けられます。「分かった?」「はい、分かりました」という彼らとのやり取りを私は全く信用していません。必ず授業終わりに先生役と生徒役を交替して、今日、学んだことの確認をします。

 

きちんと理解し、そのうえで「何を覚えたらいいのか」が明確になっていなければ学力はつきませんし、自分で復習もできません。

 

成績不振の生徒さんであっても、偏差値50まででしたらこの方法で簡単に、しかも短期間で成績は上がります。手応えを感じ始めると勉強が面白くなり、更に上を目指す子もたくさんいました。上手に子供のポテンシャルを引き出せるかが鍵です。